「孤独な絵肌・滑り込む音楽」-はじめに-

これは、とある世界の絵描きの物語である。

この世界にはもともと、白と黒しかなかった。
やがて人が生まれ、白に黒を載せて、音楽を創った。
たくさんの音色とともに人は生を謳歌した。

やがて、世界に色が増えていった。
この世界では、「生物」が「死ぬ」とそれぞれ一つの「色」になる。
今、この世にある、目に映る全ての色は「過去に生きた命の証」である。

絵描きは、人が生きた証である「色」を託され、絵の具という形で携え、絵を描く。
絵描きに絵を描いて貰うには、一つ条件がある。
「生きているうちに自分の大事な秘密を一つ、絵描きに話さなければいけない」

自分が死後、何色になるか。それは死んでみないと分からない。